「スイスウォーター？ マウンテンウォーター？ 何が違うの？」
デカフェを選ぶとき、多くの人は「コロンビア産」や「深煎り」といった「豆の種類」や「焙煎度合い」に注目しがちです。
しかし、デカフェの「味」と「安全性」を左右する最も重要な要素は、その「製法（カフェインの抜き方）」にあります。
「デカフェって、薬品を使ってるから体に悪いんじゃないの？」
かつては化学的な溶剤を使う製法もありましたが、ご安心ください。
現在、私たちが日本で目にする「デカフェ」は、化学薬品を一切使わない安全な製法が主流です。
この記事では、コーヒーのプロである私が、その安全な3大製法を徹底的に比較し、「あなたが本当に選ぶべき一杯」を見つけるお手伝いをします。
結論ファースト！主流「安全デカフェ」製法 比較早見表
まずは結論から。
現在主流となっている、化学薬品を一切使わない「安全な製法」を表にまとめました。
| 製法（通称） | カフェイン除去の方法 | 安全性 | 風味の残りやすさ | コスト |
| ウォータープロセス （スイス式/マウンテン式） | 水（＋炭素フィルター） | ◎ (薬品不使用) | 〇 (ややスッキリ) | 高 |
| CO2（二酸化炭素） （超臨界二酸化炭素） | 二酸化炭素 | ◎ (薬品不使用) | ◎ (風味が残りやすい) | 高 |
どちらも化学薬品不使用で「安全性」は完璧です。
選ぶポイントは「味の好み」だけ！
各製法の「仕組み」と「味」をプロが深掘り解説
「安全性は分かったけど、なぜ味に違いが出るの？」
その秘密は、カフェインを抜く「仕組み」にあります。
①「ウォータープロセス（水で抜く）」
「水」の力だけを使ってカフェインを抜く、最も安全な製法の代表格です。
これには「スイスウォーター」と「マウンテンウォーター」という、非常に有名な2つの方式があります。
原理はどちらもほぼ同じです。
- まず生豆を水に浸し、カフェインと「風味成分」をすべて水に溶かします。
- その水を特殊な炭素フィルターに通し、カフェインだけを濾過（ろか）します。
- 出来上がった「風味成分だけが溶け込んだ水（カフェインゼロ）」に、新しい生豆を浸します。
- すると、新しい生豆からはカフェインだけが水に溶け出し、風味は豆に残ります。（浸透圧の原理）
[両者の違い]
- スイスウォーター (Swiss Water®):カナダの「スイスウォーター社」が行うブランド製法です。ロゴマーク（®）が品質の証となっています。
- マウンテンウォーター (Mountain Water):メキシコの「Descamex社」が行う製法で、メキシコ最高峰の山の氷河水を使用しているのが特徴です。（例：辻本珈琲など）
[味の特徴]
どちらの製法も、カフェイン以外の成分（雑味など）も一緒に洗い流される傾向があり、非常にクリーンでスッキリした味わいになります。
▼【動画で見る】水だけでカフェインを抜く仕組み
「水だけでカフェインを抜くって、どういうこと？」と、文章だけではイメージが湧きにくいかもしれません。 スイスウォータープロセスがどのように行われているか、こちらの動画（The Secretive Decaf Process Using ONLY Water）で非常に分かりやすく紹介されています。
※海外の動画ですが、再生後に字幕設定を「日本語」にしてご覧いただくと、驚きの仕組みがよく分かります。
②「CO2（超臨界二酸化炭素）抽出」（二酸化炭素で抜く）
「水」ではなく「二酸化炭素（CO2）」を使う、もう一つの安全な製法です。
[仕組み]
- 生豆に高圧をかけ、「超臨界流体」（液体と気体の中間）状態にした二酸化炭素（CO2）を通します。
- CO2はカフェインと強く結びつく性質があり、カフェインだけをピンポイントで引き抜きます。
- CO2は常温・常圧に戻せばただの気体になるため、豆に薬品成分が残る心配は一切ありません。
[味の特徴]
水に風味成分を溶かし出す工程がないため、コーヒー豆が持つ本来の風味や香りが最も残りやすいと言われています。
[見分け方]
「CO2抽出法」「超臨界二酸化炭素抽出」と記載されています。（例：イノセントコーヒーなど）
【結論】「スッキリ派」か「風味重視派」か
ここまで読んでいただいた通り、「スイスウォーター」「マウンテンウォーター」「CO2」のいずれかであれば、安全性を心配する必要は、もうありません。
結論は「味の好み」で選ぶべきです。
まとめ：製法を知れば、デカフェ選びはもっと楽しくなる
もう「デカフェだから」と味を妥協する必要はありません。
「今日はスッキリしたいからウォータープロセス系にしよう」
「今夜は香りの良いCO2にしよう」
と、製法で「味」を選ぶことができます。
ぜひパッケージの裏を見て、「製法」という新しい基準で、あなただけの一杯を見つけてください。
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